この記事では、今まで特許とはあまり縁がなかった技術系の事業者を念頭に、特許の活用方法を解説します。
特許の重要性
技術力を事業の柱にしようとしている中小企業にとって、特許は重要性は増してきています。その理由として、情報や人・モノの流れのグローバル化があります。市場が世界中に広がっているだけではなく、競争相手や協業相手も同様で至る所に存在します。
理由のもう一つは調査や分析技術の発達です。現在はインターネット上で様々な情報を検索することができ、さらに計測や計算などの分析技術が進歩しています。自分たちにとって必要な技術や障害となる特許の見極めの精度が上がっています。
一方、特許には攻めと守りの両面があります。
守りとは、自社の商品が他社の特許を侵害しないようにすることです。
攻めの面では、商品を自ら製造する権利を独占したり、特許に実施権を与えて他社から利益を得たり、特許技術を取引材料にして他社と組んで新たな事業を展開したりすることができます。障害となる他社特許があった場合にも、クロスライセンスを結ぶという選択肢をとることが可能になります。
特許という資産をうまく運用すれば大きな利益がもたらされる一方、思いがけない損害が発生する場合もあり、戦略的に取り組む必要があります。
基礎知識
まず、基礎知識を確認しましょう。
一般的に「特許」とは、有用な発明に対し、それを公開する代償として一定期間その発明を独占的に使用できる権利のことです。
では、「発明」とは何でしょうか。日本の特許法によると、「自然法則を利用した技術的創作のうち、高度のもの」を言います。
どんな発明に対しも特許が与えられるかというとそうではなく、以下のような要件を満たす必要があります。
特許になる発明の要件
特許法上の「発明」であること=「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」
産業上の利用性を有すること
新規性を有すること
進歩性を有すること
先願の発明であること
出願後に公開された先願の明細書に記載された発明でないこと
公序良俗または公衆の衛生を害するおそれがないこと
ここにあげた各項目の詳細な説明は、ここでは省略します(機会があれば後日・・・)。
活用できる特許でなければ意味がない
特許は出願した後、審査請求によって審査され、要件を満たすと特許権が付与されます(特許登録と言います)。
特許庁の審査官は拒絶理由(特許にできない理由)がない限り、特許査定を下します。
ところで、特許査定になるか拒絶査定(特許が認められない査定)になるかは、利用価値とは関係がありません。
そのため、特許になっても以下のような理由で誰も使わないという状況が生まれます。
・発明が事業として成り立たない(需要が小さい、コストがかかりすぎる、など)
・その発明を使わなくても同様の目的が達成できる(他の実現手段が存在する)
・事業化のための別の大きな課題がある(未解決の技術的問題、他の特許の存在など)
このような場合では、特許権者は特許の維持のために経費を生み出しているだけです。
(次回へ続く)